「示談金払え」金銭要求・不当クレームへの対応|恐喝罪と正当クレームの境界線
この記事は誰のため?
この記事は、Googleマップや口コミサイトで「慰謝料を払え」「示談金を用意しろ」「誠意を見せろ」などの金銭要求を受けた店舗経営者に向けて書かれています。
金銭要求には、正当な損害賠償請求と、不当な恐喝の2種類があります。対応を誤ると、恐喝に応じてしまったり、逆に正当なクレームを無視して訴訟リスクが高まったりします。
この記事を読むことで、正当な請求と不当な要求の見分け方、恐喝罪の判断基準、弁護士を通じた交渉方法、示談書の作成方法が分かります。
正当な損害賠償請求と不当な金銭要求の境界線

金銭要求を受けた場合、まず「正当な請求」か「不当な要求」かを見極めます。この判断を誤ると、大きな損害を被る可能性があります。
正当な損害賠償請求
正当な損害賠償請求とは、店側の過失により実際に損害が発生し、その賠償を求める請求です。
具体例を見ていきましょう。食中毒による医療費請求として「店の料理で食中毒になり、病院代3万円かかった。払ってほしい」という要求は、因果関係が証明されれば正当な請求です。
商品の欠陥による損害として「買った服が破れていて、大事な会議で恥をかいた。クリーニング代5,000円を払え」という要求は、クリーニング代は正当ですが、「恥をかいた慰謝料」は過大請求の可能性があります。
予約ミスによる損害として「予約したのに席がなく、他の店を探した。タクシー代5,000円を払え」という要求は、実費(タクシー代)は正当ですが、慰謝料は過大請求の可能性があります。
不当な金銭要求(恐喝の可能性)
不当な金銭要求とは、店側に過失がない、または過失があっても請求額が過大、または脅迫的な表現を伴う要求です。
根拠のない慰謝料請求として「料理がまずかった。精神的苦痛を受けたので慰謝料10万円払え」という要求は、「まずい」は主観的評価であり、慰謝料請求の根拠がありません。
過大な金額請求として「服にソースがついた。クリーニング代として5万円払え」(実際のクリーニング代は2,000円程度)という要求は、過大請求であり、恐喝の可能性があります。
脅迫を伴う金銭要求として「5万円払わないと、ネットで拡散する」「誠意を見せないと、保健所に通報する」という要求は、恐喝罪(刑法249条)に該当する可能性があります。
恐喝罪の成立要件
金銭要求が恐喝罪に該当するかの判断基準を理解することが重要です。刑法249条に定められた恐喝罪は重大な犯罪であり、適切に対処する必要があります。
恐喝罪(刑法249条)

恐喝罪とは、人を恐喝して財物を交付させること、または財産上不法の利益を得ることです。成立要件は3つあります。第一に恐喝行為(脅迫または暴行)、第二に相手方の畏怖(恐怖を感じること)、第三に財物の交付または財産上の利益です。法定刑は10年以下の懲役です。
恐喝罪に該当する表現
恐喝罪に該当する具体例としては「5万円払わないと、ネットで拡散する」「誠意を見せないと、店を潰す」「金を払えば、低評価レビューを消してやる」「示談金を払わないと、警察に行く」(正当な理由がない場合)「慰謝料を払わないと、マスコミに通報する」などがあります。
ポイントは、「〇〇しないと△△する」という条件付きの脅迫であること、「誠意を見せろ」「分かっているだろう」などの暗示的な金銭要求であることです。
恐喝罪に該当しない表現
恐喝罪に該当しない具体例としては「医療費3万円を払ってください」(具体的な損害の請求)、「弁護士に相談します」(正当な権利行使の予告)、「消費者センターに相談します」(正当な権利行使の予告)などがあります。
ポイントは、具体的な損害額の請求であること、正当な権利行使(弁護士相談、消費者センター相談等)の予告であることです。
金銭要求を受けた場合の対応フローチャート
金銭要求を受けた場合、冷静かつ迅速に対応することで、被害を最小限に抑えることができます。
ステップ1: 証拠保全(最優先)

即座に実施すべきこととして、まずスクリーンショットを撮影します。口コミ全文、DM・メールのやり取り、投稿者のアカウント情報、投稿日時を記録してください。
次に音声・動画の録音(電話・対面の場合)を行います。スマホの録音アプリで録音してください。「録音しています」と事前に伝える必要はありません。一方当事者の同意があれば合法です。
さらにやり取りの記録を残します。いつ、どこで、誰から、どのような要求があったか、要求された金額、要求の理由を詳細に記録してください。
ステップ2: 正当性の判断
正当性を判断するためのチェックリストを活用しましょう。
| 項目 | 正当な請求 | 不当な要求 |
|---|---|---|
| 損害の具体性 | 医療費、交通費等の実費 | 「精神的苦痛」など曖昧 |
| 因果関係 | 店の過失と損害の因果関係が明確 | 因果関係が不明確 |
| 金額の妥当性 | 実費相当 | 実費に対して過大 |
| 要求の仕方 | 「請求します」 | 「払わないと〇〇する」 |
| 証拠の有無 | 領収書、診断書等あり | 証拠なし |
判断に迷う場合は、弁護士に相談(初回相談30分5,000円から1万円)するか、消費者センターに相談(無料)してください。
ステップ3: 対応方法の選択
正当な請求の場合は、まず謝罪し、損害額の確認(領収書、診断書等の提出を依頼)を行います。次に弁護士を通じて示談交渉を進め、最後に示談書を作成します。
不当な要求の場合は、一切の金銭支払いを拒否し、警察に相談(恐喝罪の可能性)します。さらに弁護士に相談(削除請求・発信者情報開示請求)し、プラットフォームに削除申請を行います。
ステップ4: 弁護士を通じた交渉

弁護士に依頼すべき理由は明確です。法的根拠のない要求を拒否できること、示談金額の妥当性を判断できること、示談書の作成を依頼できること、店側が直接交渉するリスクを避けられることです。
弁護士費用の目安は、初回相談が30分5,000円から1万円、示談交渉が10万円から30万円、訴訟対応が50万円から150万円です。
絶対にやってはいけないNG対応
💡 ヒント: 軽度のクレームへの対応は軽度クレーム対応一覧をご覧ください。エスカレーション対応の他のケースはエスカレーション対応一覧で確認できます。脅迫・恐喝対応は脅迫対応マニュアル、名誉毀損対応は名誉毀損対応マニュアルもご参照ください。
金銭要求への対応を誤ると、恐喝に応じたり、逆に訴訟リスクが高まったりします。以下のNG対応は絶対に避けてください。
NG対応1: 安易に金銭を支払う
相手から「慰謝料10万円払え」と要求されても、「分かりました。すぐにお支払いします」と安易に応じてはいけません。
恐喝に応じると、さらに要求がエスカレートします。支払った事実が証拠となり、「店が非を認めた」と主張されます。また、他のクレーマーを呼び込むリスクもあります。
正しい対応は、「弁護士と相談します」と伝え、支払いを保留すること、損害の具体的内容を確認(領収書等の提出を依頼)することです。
NG対応2: 口頭での約束
相手から「5万円払えば、レビューを消す」と言われても、「分かりました。後日お支払いします」と口頭で約束してはいけません。
口頭での約束は、後で「言った・言わない」のトラブルになります。「5万円払ったのに、レビューを消してくれない」とさらに揉める可能性があります。
正しい対応は、示談する場合は必ず書面(示談書)を作成すること、弁護士を通じて交渉することです。
NG対応3: 感情的に反論する
相手から「誠意を見せろ」と言われても、「ふざけるな。あなたの方こそクレーマーだ」と感情的に反論してはいけません。
感情的な対応は、逆に名誉毀損で訴えられる可能性があります。やり取りが録音されていた場合、不利な証拠になります。
正しい対応は、冷静に「弁護士と相談します」と伝えることです。
NG対応4: 相手の要求を全て飲む
相手から「謝罪文をSNSに投稿しろ。慰謝料10万円払え。社長が直接謝罪に来い」と複数の要求をされても、「全て対応します」と全て飲んではいけません。
一度要求を飲むと、さらにエスカレートします。謝罪文のSNS投稿は、逆に炎上リスクがあります。
正しい対応は、「弁護士と相談します」と伝え、一旦保留することです。
公開返信テンプレート(金銭要求口コミ用)
金銭要求を含む口コミには、公開返信をしないことが原則です。返信すると、投稿者が削除するリスクがあります。ただし、他の閲覧者への説明が必要な場合は、以下のテンプレートを参考にしてください。
テンプレート1: 弁護士に相談済み
この度はご連絡いただき、ありがとうございます。
お客様からのご要望につきまして、弁護士と相談の上、適切に対応させていただきます。
恐れ入りますが、今後のやり取りは弁護士を通じて行わせていただきます。
[店舗名] 店長
このテンプレートのポイントは、「弁護士」という言葉で法的対応を示唆すること、直接のやり取りを拒否することです。
テンプレート2: 事実確認を依頼
この度はご連絡いただき、ありがとうございます。
お客様のご請求内容につきまして、詳しくお話をお伺いしたく、恐れ入りますが店舗まで直接ご連絡いただけますでしょうか。
領収書や診断書等の資料をご提示いただけますと幸いです。
[店舗名] 店長
このテンプレートのポイントは、証拠の提示を求めること、公開の場では金額の話をしないことです。
テンプレート3: 返信しない(最も推奨)

返信しない理由は明確です。公開返信すると、投稿者が削除する可能性があり、証拠が消えます。弁護士を通じて、非公開で交渉する方が効果的です。
示談交渉の進め方
正当な請求の場合、適切な示談交渉を行うことで、トラブルを円満に解決できます。
示談交渉の流れ
ステップ1として、損害額の確認を行います。依頼すべき資料は、医療費の領収書、診断書、交通費の領収書、その他実費の証明です。
ステップ2として、妥当な示談金額の算定を行います。示談金の内訳は、実費(医療費、交通費等)と慰謝料(実費の1から3割程度が目安)です。
具体例として、食中毒で医療費3万円かかった場合、実費3万円に慰謝料1万円から3万円を加え、合計4万円から6万円が妥当な示談金となります。
ステップ3として、示談書の作成を行います。示談書には、以下の条項を必ず含めます。
示談書の必須条項は、示談金額、支払い方法・期日、清算条項(「本件に関し、今後一切の請求をしない」)、口コミ削除の約束(該当する場合)、秘密保持条項(「本件について、第三者に口外しない」)です。
示談書の例は以下の通りです。
示談書
〇〇株式会社(以下「甲」という)と、△△(以下「乙」という)は、〇年〇月〇日に甲の店舗で発生した事故について、以下のとおり示談する。
第1条(示談金)
甲は乙に対し、示談金として金〇万円を支払う。
第2条(支払方法)
甲は、本示談書締結日より7日以内に、乙の指定する銀行口座に振り込む方法により支払う。
第3条(清算条項)
甲及び乙は、本件に関し、本示談書に定めるもののほか、今後一切の債権債務がないことを相互に確認する。
第4条(口コミ削除)
乙は、Googleマップに投稿した口コミを、本示談書締結後速やかに削除する。
第5条(秘密保持)
甲及び乙は、本件について、第三者に口外しないことを約束する。
〇年〇月〇日
甲: 〇〇株式会社 代表取締役 〇〇
乙: △△(署名・捺印)
ステップ4として、示談金の支払いを行います。支払い方法は、銀行振込(振込明細を保管)または現金手渡し(必ず領収書をもらう)です。
注意点として、示談書を交わす前に支払わないこと、口コミ削除を確認してから支払う(または同時履行)ことが重要です。
予防策: 不当な金銭要求を受けにくくするために
不当な金銭要求を未然に防ぐための対策を講じることで、トラブルを大幅に減らすことができます。
予防策1: クレーム対応マニュアルの整備

マニュアルに含めるべき内容は、クレームの種類別対応方法、金銭要求を受けた場合のエスカレーションルール、絶対に言ってはいけないNG表現(「お詫びにお金をお渡しします」等)です。
予防策2: スタッフ教育
教育内容として、「お詫びに〇〇します」と安易に約束しないこと、金銭要求を受けたら即座に店長・本部に報告すること、感情的にならず冷静に対応することを徹底します。
予防策3: 録音・録画の準備
クレーム対応時は、必ず録音・録画します。録音・録画の方法として、スマホの録音アプリ、店内の防犯カメラ、ボイスレコーダーを活用します。
法的根拠として、一方当事者(店側)の同意があれば、録音は合法です。「録音しています」と事前に伝える必要はありません。
予防策4: 顧問弁護士との契約
金銭要求トラブルは、初動が重要です。顧問契約のメリットは、すぐに相談できること、示談交渉を依頼できること、抑止力になること(「顧問弁護士がいる」と明記)です。費用は月額3万円から5万円が目安です。
金銭要求トラブルの判例・事例
実際に刑事告訴・民事訴訟に発展した事例を紹介します。これらの事例から、適切な対応方法を学ぶことができます。
事例1: 食中毒クレームで100万円要求(恐喝未遂で逮捕)
「食中毒になった。慰謝料100万円払え。払わないとネットで拡散する」と脅迫した事例です。店側が警察に被害届を出し、投稿者が恐喝未遂罪で逮捕されました。判決は懲役1年(執行猶予3年)でした。教訓として、過大な金額要求と脅迫は恐喝罪になることが分かります。
事例2: 衣服汚損で正当な賠償請求(示談成立)
店員がワインをこぼし、客の服を汚した事例です。クリーニング代5,000円と慰謝料1万円を請求され、店側が謝罪し、示談金1.5万円で示談成立しました。教訓として、正当な請求には誠実に対応すべきことが分かります。
事例3: 「誠意を見せろ」暗示的要求(示談拒否・訴訟)
「誠意を見せろ」と曖昧な金銭要求をされた事例です。店側が「具体的な損害額を教えてください」と返答し、相手が「分かっているだろう」と回答しました。店側が示談を拒否し、相手が提訴しましたが、裁判所が「具体的な損害の立証なし」として請求棄却しました。教訓として、曖昧な要求には応じず、具体的な損害の立証を求めるべきことが分かります。
次のステップ
金銭要求トラブル対応をさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もご参照ください。
免責
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。金銭要求への対応は、個別の状況により異なります。必ず弁護士にご相談ください。示談交渉や恐喝罪の判断については、専門家の助言が必要です。
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