「営業妨害で訴える」前に知るべきこと|信用毀損罪・業務妨害罪の成立要件
この記事は誰のため?
この記事は、悪質な口コミを書かれて「営業妨害で訴えたい」と考えている店舗オーナー・店長に向けて書かれています。
信用毀損罪・業務妨害罪が成立するかどうか自分では判断できないという方や、警察に被害届を出すべきか、弁護士に相談すべきか迷っている方も少なくありません。
この記事を読むことで、営業妨害の法的要件、成立する具体例、民事と刑事の違い、警察への相談方法が分かります。
まず最初にやるべきこと(公開返信は慎重に)
「営業妨害で訴える」と決める前に、以下の点を確認しましょう。
本当に刑事事件として立件できるか確認する
営業妨害で刑事告訴するには、以下の要件を満たす必要があります:
- 虚偽の情報: 事実と異なる内容が書かれている
- 営業妨害の意図: 営業を妨害する意図が明確
- 実害: 予約キャンセル、売上減少など、具体的な被害が発生している
単に「態度が悪い」「まずい」といった主観的な感想では、営業妨害には該当しません。
民事(損害賠償)vs 刑事(刑事告訴)の違い
民事(損害賠償請求)
- 目的: 金銭的な賠償を受ける
- 手続き: 弁護士に依頼して民事訴訟を提起
- 期間: 6ヶ月〜1年程度
- 費用: 弁護士費用30万円〜100万円程度
刑事(刑事告訴)
- 目的: 投稿者を刑事処罰する(罰金、懲役など)
- 手続き: 警察に被害届・告訴状を提出
- 期間: 6ヶ月〜1年以上(警察が受理しない場合もある)
- 費用: 弁護士費用10万円〜30万円程度(告訴状作成)
多くの場合、民事で損害賠償を請求する方が現実的です。刑事告訴は警察が受理しないケースも多いためです。
公開返信テンプレ(出す場合)
営業妨害で法的手続きを検討している場合でも、公開返信は慎重に行いましょう。
返信テンプレート(法的手続きを示唆するパターン)
ご指摘の内容について確認いたしましたが、事実と異なる内容が含まれており、当店の営業に支障をきたしております。
弁護士と協議の上、適切な法的措置を検討しております。
詳細につきましては、法的手続きを通じて対処してまいります。
[店舗名] 店長
返信テンプレート(刑事告訴を示唆するパターン)
ご指摘の内容について確認いたしましたが、事実と異なる虚偽の情報が記載されており、当店の信用を著しく毀損しております。
本件につきましては、信用毀損罪・業務妨害罪に該当する可能性があり、警察および弁護士と協議の上、適切に対処してまいります。
[店舗名] 店長
ポイント解説
- 「事実と異なる」: 客観的な事実のみを伝える
- 「営業に支障」: 具体的な被害が発生していることを示す
- 「弁護士と協議」: 法的手続きを取る意思があることを示す
- 感情的な表現は避ける: 「許せない」「絶対に訴える」など強い言葉は使わない
削除依頼/法的手続きの判断基準
営業妨害で訴える前に、まずは削除依頼を試すことをおすすめします。
削除依頼を先に試すべき理由
- コスト: 削除依頼は無料、法的手続きは数十万円〜100万円以上
- 期間: 削除依頼は1週間〜2週間、法的手続きは6ヶ月〜1年以上
- 成功率: 削除依頼が認められれば、法的手続きは不要
まずはGoogleマップ口コミの削除依頼手順を確認し、削除依頼を試してみましょう。
法的手続きを検討すべきケース
- 削除依頼が認められなかった
- 複数の悪質なレビューが投稿されている
- 営業に深刻な影響が出ている(予約キャンセル、売上減少など)
- 投稿者を特定して損害賠償請求をしたい
信用毀損罪(刑法233条)の成立要件
信用毀損罪は、虚偽の情報を流布して他人の信用を傷つける犯罪です。
法律の条文
刑法第233条(信用毀損及び業務妨害) 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
成立要件
信用毀損罪が成立するには、以下の要件を満たす必要があります:
- 虚偽の風説の流布: 事実と異なる情報を不特定多数に広める
- 信用の毀損: 経済的な信用(支払い能力、商品・サービスの品質など)を傷つける
- 故意: 信用を傷つける意図がある
「虚偽の風説」とは
- 虚偽: 事実と異なる内容
- 風説: 噂、情報(確実な事実ではない)
- 流布: 不特定多数に広める(口コミサイト、SNSなど)
成立する具体例
例1: 食中毒のデマ
「この店は先月、食中毒を出して保健所から営業停止処分を受けた」
→ 事実と異なる場合、信用毀損罪に該当する可能性がある
例2: 違法行為のデマ
「この店は無許可で営業している」「衛生管理が全くされていない」
→ 事実と異なる場合、信用毀損罪に該当する可能性がある
例3: 詐欺のデマ
「この店は詐欺まがいの商売をしている」「ぼったくりバー」
→ 事実と異なる場合、信用毀損罪に該当する可能性がある
成立しない具体例
例1: 主観的な評価
「この店はまずい」「高すぎる」「おすすめしない」
→ 主観的な感想であり、信用毀損罪には該当しない
例2: 事実に基づく批判
「待ち時間が1時間以上あった」「スタッフの対応が冷たかった」
→ 実際に起きた事実であれば、信用毀損罪には該当しない
偽計業務妨害罪(刑法233条)の成立要件
偽計業務妨害罪は、嘘や策略を使って他人の業務を妨害する犯罪です。
成立要件
偽計業務妨害罪が成立するには、以下の要件を満たす必要があります:
- 偽計: 人を欺く、または人の誤認・不知を利用する
- 業務の妨害: 営業活動、事業運営を妨害する
- 故意: 業務を妨害する意図がある
「偽計」とは
- 人を欺く: 虚偽の情報を流す、嘘をつく
- 人の誤認・不知を利用する: 事実と異なる情報を使って、人を誤解させる
成立する具体例
例1: 虚偽のレビューを大量投稿
競合他社が複数のアカウントから★1レビューを連続投稿
→ 偽計業務妨害罪に該当する可能性がある
例2: 来店していないのに悪評を投稿
「この店で食中毒になった」と嘘をついて投稿
→ 偽計業務妨害罪に該当する可能性がある
例3: 事実と異なる営業時間を投稿
「この店は閉店しました」と嘘の情報を投稿
→ 偽計業務妨害罪に該当する可能性がある
成立しない具体例
例1: 主観的な評価
「この店は態度が悪い」「二度と行かない」
→ 主観的な感想であり、偽計業務妨害罪には該当しない
例2: 事実に基づく批判
「予約時間より30分遅れてサービスが始まった」
→ 実際に起きた事実であれば、偽計業務妨害罪には該当しない
威力業務妨害罪(刑法234条)の成立要件
威力業務妨害罪は、暴力や脅迫など、威力を使って他人の業務を妨害する犯罪です。
法律の条文
刑法第234条(威力業務妨害) 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条(233条)の例による。
成立要件
威力業務妨害罪が成立するには、以下の要件を満たす必要があります:
- 威力: 暴力、脅迫、社会的・経済的圧力など
- 業務の妨害: 営業活動、事業運営を妨害する
- 故意: 業務を妨害する意図がある
「威力」とは
- 暴力: 物理的な力(店舗への侵入、器物損壊など)
- 脅迫: 「潰してやる」「火をつける」などの脅し
- 社会的圧力: 大量の電話、メール、来店による嫌がらせ
成立する具体例
例1: 大量の嫌がらせ電話
投稿者が店舗に何十回も電話をかけて、業務を妨害
→ 威力業務妨害罪に該当する可能性がある
例2: 店舗への脅迫
「お前の店を潰してやる」「火をつけるぞ」と脅迫
→ 威力業務妨害罪に該当する可能性がある
例3: SNSでの炎上扇動
「この店に抗議しよう」と呼びかけて、大量のクレームを誘発
→ 威力業務妨害罪に該当する可能性がある
成立しない具体例
例1: 単なる悪い口コミ
「この店はまずい」「おすすめしない」
→ 威力には該当せず、威力業務妨害罪には該当しない
法務省の犯罪被害者支援窓口や、警察庁のサイバー犯罪対策も参考になります。
「虚偽の風説」「偽計」「威力」の違い
| 犯罪名 | 手段 | 具体例 |
|---|---|---|
| 信用毀損罪 | 虚偽の風説の流布 | 「食中毒を出した」と嘘を投稿 |
| 偽計業務妨害罪 | 偽計(人を欺く) | 来店していないのに悪評を投稿 |
| 威力業務妨害罪 | 威力(暴力・脅迫) | 大量の嫌がらせ電話、脅迫 |
ポイント解説
- 信用毀損罪: 経済的な信用を傷つける(「支払い能力がない」「商品が粗悪」など)
- 偽計業務妨害罪: 嘘や策略を使って業務を妨害する(「虚偽のレビュー」「来店していないのに投稿」など)
- 威力業務妨害罪: 暴力や脅迫を使って業務を妨害する(「大量の嫌がらせ電話」「脅迫」など)
実際の事案では、これらの犯罪は重なり合うこともあります。弁護士に相談して、どの罪名で告訴するかを決めましょう。
民事(損害賠償)vs 刑事(刑事告訴)の違い
営業妨害への対応には、民事と刑事の2つの方法があります。
民事(損害賠償請求)
目的: 金銭的な賠償を受ける
手続きの流れ
- 弁護士に相談
- 発信者情報開示請求で投稿者を特定
- 示談交渉または民事訴訟を提起
- 損害賠償金を受け取る
期間: 6ヶ月〜1年程度
費用: 弁護士費用30万円〜100万円程度
メリット
- 損害賠償金を受け取れる
- 刑事告訴より成功率が高い
デメリット
- 費用と時間がかかる
- 投稿者が無資力の場合、賠償金を回収できない
刑事(刑事告訴)
目的: 投稿者を刑事処罰する(罰金、懲役など)
手続きの流れ
- 警察に被害届・告訴状を提出
- 警察が捜査(任意)
- 検察が起訴・不起訴を判断
- 裁判所が判決(有罪・無罪)
期間: 6ヶ月〜1年以上(警察が受理しない場合もある)
費用: 弁護士費用10万円〜30万円程度(告訴状作成)
メリット
- 投稿者を刑事処罰できる
- 警察が捜査してくれる(弁護士費用が安い)
デメリット
- 警察が受理しない場合が多い
- 起訴されないケースもある
- 損害賠償金は受け取れない(刑事罰のみ)
どちらを選ぶべきか
民事を選ぶべきケース
- 金銭的な賠償を受けたい
- 営業への実害が大きい(予約キャンセル、売上減少など)
- 確実に対応したい(刑事は警察が受理しない可能性がある)
刑事を選ぶべきケース
- 投稿者を刑事処罰したい
- 暴力・脅迫があった(威力業務妨害罪)
- 弁護士費用を抑えたい(警察が捜査してくれる)
多くの場合、民事で損害賠償を請求する方が現実的です。
警察への被害届・告訴状の書き方
刑事告訴をする場合、警察に被害届または告訴状を提出します。
被害届と告訴状の違い
被害届
- 犯罪被害を警察に報告する書類
- 警察が捜査するかどうかは任意
告訴状
- 犯人の処罰を求める書類
- 警察は受理後、捜査義務がある(ただし、不受理とされることもある)
告訴状に記載する内容
- 告訴人の情報: 氏名、住所、電話番号、職業
- 被告訴人の情報: 特定できている場合は氏名・住所、不明の場合は「不詳」
- 告訴事実: いつ、どこで、どのような犯罪が行われたか
- 被害の内容: 予約キャンセル、売上減少など、具体的な被害
- 証拠: 投稿のスクリーンショット、売上推移、予約記録など
- 告訴の趣旨: 刑事処罰を求める意思
告訴状の例
告訴状
令和○年○月○日
○○警察署長 殿
告訴人
住所: 東京都○○区○○ ○-○-○
氏名: ○○ ○○
職業: 飲食店経営
被告訴人
氏名: 不詳(Googleアカウント名「○○○○」)
告訴事実
令和○年○月○日頃、被告訴人は、Googleマップの当店レビュー欄に、「この店は食中毒を出したことがある」との虚偽の情報を投稿し、当店の信用を毀損しました。
当店は過去に食中毒を出したことは一切なく、保健所からの営業停止処分も受けたことがありません。
この投稿により、予約キャンセルが○件発生し、売上が前月比○○万円減少するなど、当店の営業に重大な支障が生じています。
よって、被告訴人を信用毀損罪(刑法233条)で告訴いたします。
証拠
1. 投稿のスクリーンショット
2. 予約キャンセルの記録
3. 売上推移のグラフ
以上
警察が受理しないケース
- 営業への実害が不明確
- 投稿内容が主観的な感想の範囲内
- 証拠が不十分
警察が受理しない場合は、弁護士に相談して民事で対応することをおすすめします。
弁護士費用と裁判期間
民事(損害賠償請求)の費用と期間
弁護士費用
- 着手金: 30万円〜50万円
- 成功報酬: 損害賠償額の10〜20%
- 実費: 裁判所の印紙代、郵送費など数万円
裁判期間
- 発信者特定: 6ヶ月〜1年
- 損害賠償訴訟: 6ヶ月〜1年
- 合計: 1年〜2年程度
刑事(刑事告訴)の費用と期間
弁護士費用
- 告訴状作成: 10万円〜30万円
- 刑事裁判のサポート: 30万円〜50万円(任意)
期間
- 警察の捜査: 6ヶ月〜1年
- 検察の起訴判断: 1ヶ月〜3ヶ月
- 刑事裁判: 6ヶ月〜1年
- 合計: 1年〜2年以上
店舗としてやるべき記録
営業妨害で法的手続きを取る場合、証拠の保存が非常に重要です。
記録すべき項目
- 投稿のスクリーンショット: URL、投稿日時、全文が映るように保存
- 投稿者の情報: アカウント名、プロフィール画像、他のレビュー履歴
- 被害の証明: 予約キャンセルの記録、売上推移、顧客からの問い合わせ内容
- 対応記録: いつ、誰が、どう対応したか(公開返信、削除依頼、弁護士相談など)
証拠の保存方法
【証拠保存チェックリスト】
□ 投稿のスクリーンショット(URL、投稿日時、全文が映るように)
□ 投稿のURL(コピー&ペーストでテキスト保存)
□ 投稿者のプロフィールページのスクリーンショット
□ 予約キャンセルの記録(予約システムのログ、メール)
□ 売上推移のグラフ(投稿前後で比較)
□ 顧客からの問い合わせ内容(「口コミを見て不安」などの声)
□ 削除依頼の送信記録(送信日時、内容)
□ 弁護士相談のメモ(相談日時、内容、費用見積もり)
免責
重要な注意事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言ではありません。
- 信用毀損罪・業務妨害罪が成立するかどうかは、個別の状況によります。
- 法的手続きを取る場合は、必ず弁護士などの専門家にご相談ください。
- 本記事の内容をそのまま実行した結果生じた損害について、当サイトは一切の責任を負いません。
- 弁護士費用、裁判費用は事案によって異なります。詳細は弁護士にご確認ください。
- 警察が被害届・告訴状を受理しない場合もあります。
最終更新: 2025-01-13
次のステップ
✅ まずは削除依頼を試したい方は → Googleマップ口コミの削除依頼手順
⚠️ 投稿者を特定して損害賠償請求をしたい方は → 発信者情報開示請求の流れと費用
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