差別的発言・ヘイトスピーチ口コミへの対応|削除基準と法的措置の判断
この記事は誰のため?
この記事は、Googleマップや口コミサイトで人種差別、性差別、障害者差別などのヘイトスピーチを含むレビューを受けた店舗経営者・個人事業主に向けて書かれています。
差別的発言は、名誉毀損罪・侮辱罪に該当する可能性があり、プラットフォームの削除対象にもなります。しかし、削除基準は曖昧で、申請しても却下されるケースがあります。
この記事を読むことで、差別的口コミの削除申請方法、法的措置の判断基準、人権擁護委員会への相談方法が分かります。
差別的発言・ヘイトスピーチとは?

ヘイトスピーチの定義
ヘイトスピーチとは、人種、民族、国籍、性別、性的指向、障害、宗教などを理由に、特定の個人や集団を攻撃・侮辱する表現のことです。
法律上の定義としては、「ヘイトスピーチ解消法」(本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律)が2016年に施行されました。また、刑法230条(名誉毀損罪)、刑法231条(侮辱罪)も関連します。
差別的口コミの種類
差別的口コミは、対象となる属性によっていくつかの種類に分類できます。それぞれの削除基準や法的評価が異なるため、種類を正しく理解することが重要です。
1. 人種・民族差別
人種・民族差別の具体例としては「この店は外国人がやっている。不潔だ」「中国人の店だから信用できない」「店員が韓国人。日本語が下手で不快」といった表現があります。
削除基準として、Googleマップでは「人種や民族を理由にした攻撃的な内容」は削除対象です。食べログでも「差別的な表現」は削除対象となっています。
2. 性差別・性的指向差別
性差別・性的指向差別の具体例としては「女の店長だから仕事ができない」「ゲイの店員がいて気持ち悪い」「LGBTを雇うな。子供に悪影響だ」といった表現があります。
Googleマップでは「性別や性的指向を理由にした攻撃的な内容」は削除対象です。食べログでも「性的指向に関する差別的表現」は削除対象となっています。
3. 障害者差別

障害者差別の具体例としては「車椅子の客がいて邪魔だった」「知的障害者を雇うな。危ない」「身体障害者が働いていて気分が悪い」といった表現があります。
Googleマップでは「障害を理由にした攻撃的な内容」は削除対象です。また、障害者差別解消法違反の可能性もあります。
4. 年齢差別
年齢差別の具体例としては「老人ばかりで動きが遅い」「若い店員は生意気だ」といった表現があります。
ただし、単なる年齢への言及は削除されにくい傾向があります。「老害」「ガキ」など侮辱的表現があれば削除される可能性が高まります。
5. 宗教差別
宗教差別の具体例としては「イスラム教徒がやっている店。テロリストかも」「宗教団体が経営している。洗脳されそう」といった表現があります。
Googleマップでは「宗教を理由にした攻撃的な内容」は削除対象です。特定の宗教への誹謗中傷は削除されやすい傾向にあります。
差別的口コミの法的評価
差別的発言が、刑法上の犯罪に該当するかの判断基準を理解することが重要です。すべての差別的発言が犯罪になるわけではありませんが、一定の要件を満たせば刑事罰の対象となります。
名誉毀損罪(刑法230条)の成立要件

名誉毀損罪が成立するには、3つの要件を満たす必要があります。第一に、公然と(不特定多数が閲覧できる場所で)行われたこと。第二に、事実を摘示し(具体的な事実を述べ)たこと。第三に、人の名誉を毀損したことです。
具体例としては「この店の店長は前科者だ」(虚偽の場合)、「この店は脱税している」(虚偽の場合)といった表現が該当します。法定刑は3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金です。
差別的発言との関係では、単なる差別的な感想(「外国人は嫌い」等)は名誉毀損に該当しません。しかし、具体的な事実を摘示した場合(「この店は不法移民を雇っている」等)は名誉毀損になる可能性があります。
侮辱罪(刑法231条)の成立要件
侮辱罪が成立するには、事実を摘示せずに、公然と、人を侮辱したことが必要です。具体例としては「バカ」「クズ」「ゴミ」「死ね」「消えろ」といった表現が該当します。
法定刑は1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料です。2022年の刑法改正で厳罰化されました。
差別的発言との関係では、「〇〇人は汚い」「障害者は気持ち悪い」などの侮辱的表現は、侮辱罪に該当する可能性があります。
ヘイトスピーチ解消法の限界
重要な点として、ヘイトスピーチ解消法には罰則規定がありません。この法律の内容は、国や地方自治体に、ヘイトスピーチ解消のための啓発・教育を求める理念法です。違反者への刑事罰はありません。
ただし、実務上の効果として、プラットフォーム(Google、食べログ等)が削除基準を設ける根拠になります。また、民事訴訟(損害賠償請求)の際に、違法性の根拠になります。
削除申請の手順
差別的口コミは、プラットフォームの削除対象になります。適切な手順で申請することで、削除される可能性が高まります。
Googleマップでの削除申請

まずGoogle マイビジネスにログインし、該当レビューを選択します。次に「不適切なクチコミとして報告」をクリックし、報告理由として「嫌がらせや暴力的な言葉」または「差別的な内容」を選択します。
削除されやすいケースは、人種・民族を理由にした明確な攻撃的表現、性的指向・障害を理由にした侮辱的表現、特定の宗教への誹謗中傷です。
一方、削除されにくいケースは、単なる不満(「サービスが悪い」等)、曖昧な表現(「なんとなく気持ち悪い」等)です。削除までの期間は通常3日から2週間です。
食べログでの削除申請
食べログの「口コミに関するお問い合わせ」フォームから申請します。該当口コミのURL、削除理由を記載してください。
削除基準としては、差別的な表現、誹謗中傷、プライバシー侵害が対象となります。削除までの期間は通常1週間から1ヶ月です。
削除申請が却下された場合
削除申請が却下された場合でも、諦める必要はありません。再申請では、より具体的な削除理由を記載します。「差別的である理由」を詳しく説明し、該当する法律(名誉毀損罪、侮辱罪等)を引用することで、承認率が高まります。
それでも削除されない場合は、法的措置を検討します。弁護士に依頼し、発信者情報開示請求を行うか、裁判所を通じて削除仮処分申請を行います。
公開返信テンプレート(差別的口コミ用)
差別的口コミには、公開返信を慎重に行う必要があります。感情的な反論は、炎上リスクがあります。
テンプレート1: 差別的表現を指摘せず、事実を淡々と伝える
この度はご意見をいただき、ありがとうございます。
当店のスタッフは、国籍・性別・年齢を問わず、お客様に最高のサービスを提供できるよう日々努力しております。
もしサービスに不十分な点がございましたら、具体的にお教えいただけますと幸いです。
[店舗名] 店長
このテンプレートのポイントは、「差別的だ」と直接指摘しないこと(炎上リスクを避ける)、店の方針を淡々と伝えること、他の閲覧者に「店は冷静に対応している」と印象づけることです。
テンプレート2: 人権尊重の姿勢を明確に示す

この度はご来店いただき、ありがとうございました。
当店では、すべてのお客様とスタッフの人権を尊重し、差別のない環境づくりに取り組んでおります。
ご意見をいただきましたが、当店の方針について何卒ご理解いただけますと幸いです。
[店舗名] 店長
このテンプレートは、「人権尊重」を明記し、差別的発言には同調しない姿勢を示します。企業の社会的責任(CSR)をアピールする効果もあります。
テンプレート3: 返信しない(推奨)
返信しない理由は明確です。差別的口コミに返信すると、議論が紛糾します。「差別主義者」と議論しても、建設的な結果にはなりません。他の閲覧者は、投稿内容を見れば「異常な投稿」と判断できます。
返信しない場合の対応として、削除申請を粛々と行い、必要に応じて法的措置を検討します。
絶対に書いてはいけないNG返信表現
💡 ヒント: 軽度のクレームへの対応は軽度クレーム対応一覧をご覧ください。エスカレーション対応の他のケースはエスカレーション対応一覧で確認できます。名誉毀損・侮辱罪は名誉毀損対応マニュアル、削除申請はGoogle口コミ削除依頼もご参照ください。
差別的口コミへの返信を誤ると、炎上リスクが高まります。以下のNG例は避けてください。
NG例1: 感情的に反論する

「あなたの発言は差別です。許せません」というNG返信は避けるべきです。感情的な返信は、逆に炎上を招きます。「店側がヒステリックだ」と批判されるリスクがあります。正しい対応は、淡々と店の方針を伝えることです。
NG例2: 差別主義者と議論する
「外国人スタッフも日本人と同じように働いています。差別しないでください」というNG返信も避けるべきです。「差別しないでください」という表現は、上から目線と受け取られます。議論が長引き、他の閲覧者にも悪印象を与えます。正しい対応は、議論せず、削除申請することです。
NG例3: 逆差別的な表現を使う
「日本人だって悪いことをする人はいます」というNG返信は、逆差別と受け取られ、さらに炎上します。正しい対応は、特定の国籍・民族を引き合いに出さないことです。
法的措置の検討
削除申請が却下された場合、法的措置を検討します。差別的口コミに対しては、民事訴訟、刑事告訴、人権擁護委員会への相談という3つの選択肢があります。
民事訴訟(損害賠償請求)
民事訴訟の要件は、差別的発言により名誉が毀損されたこと、売上減少などの具体的な損害が発生したことです。
損害賠償額の目安は、個人の場合10万円から100万円、法人の場合50万円から300万円です。費用は、弁護士費用が50万円から100万円、発信者情報開示請求が50万円から100万円です。期間は1年から2年が目安です。
刑事告訴(名誉毀損罪・侮辱罪)
刑事告訴の要件は、差別的発言が名誉毀損罪または侮辱罪に該当することです。手順としては、まず警察に被害届を提出し、次に検察が起訴するか判断し、最後に刑事裁判となります。
ただし、警察が「民事不介入」と判断し、受理されないことが多いというリスクがあります。また、起訴されても罰金刑で終わることが多いです。
人権擁護委員会への相談

人権擁護委員会とは、法務省の外局である法務局に設置され、人権侵害に関する相談を受け付け、調査・救済を行う機関です。
相談方法は、最寄りの法務局に相談するか、「みんなの人権110番」0570-003-110(平日8:30から17:15)に電話します。
人権擁護委員会ができることは、相談者への助言、加害者への啓発・指導、関係機関への通告です。一方、できないことは、強制的な削除命令、刑事罰の科刑、損害賠償の命令です。
効果としては、軽度の差別的発言には有効です。加害者が反省すれば、削除に応じることもあります。
予防策: 差別的口コミを受けにくくするために
差別的口コミを完全に防ぐことはできませんが、リスクを減らす対策はあります。
予防策1: 多様性尊重の方針を明示
ホームページやGoogleマイビジネスに、多様性尊重の方針を明記します。
記載例として以下のような文章を掲載します。「当店では、国籍・人種・性別・年齢・障害・宗教・性的指向を理由に、お客様やスタッフを差別することはありません。すべての方に快適にご利用いただけるよう、スタッフ一同心がけております。」
効果として、差別主義者が来店しにくくなり、「差別のない店」というブランディングができます。
予防策2: スタッフ教育
差別的な発言を受けた場合の対応をスタッフに教育します。教育内容は、差別的発言には反論しない(感情的にならない)、店長・本部に報告、必要に応じて警察・弁護士に相談です。
予防策3: 口コミ監視ツールの導入
差別的口コミは、早期発見・早期削除が重要です。推奨ツールは、Googleアラート(無料)、レピュ研(月額2万円から)、クチコミル(月額1万円から)です。効果として、投稿されたらすぐに通知が届き、削除申請が迅速にできます。
差別的口コミの判例・事例
実際に削除申請・訴訟に発展した事例を紹介します。
事例1: 外国人経営者への人種差別口コミ(削除成功)
飲食店の経営者が中国人であることを理由に「不潔」「信用できない」と投稿された事例です。Googleマップに削除申請を行い、「人種差別的な内容」として削除されました。教訓として、明確な人種差別表現は削除されることが分かります。
事例2: LGBT差別口コミ(民事訴訟で賠償命令)
「ゲイの店員がいて気持ち悪い」と投稿された事例です。店側が発信者情報開示請求を行い、投稿者に30万円の賠償命令が出ました。教訓として、性的指向への差別的発言は損害賠償の対象となることが分かります。
事例3: 障害者差別口コミ(削除されず)
「車椅子の客がいて通路が狭く感じた」と投稿された事例です。Googleマップに削除申請を行いましたが、「単なる感想」として削除されませんでした。教訓として、「差別的意図」が明確でない場合、削除されにくいことが分かります。
次のステップ
差別的口コミ対応をさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もご参照ください。
免責
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。差別的口コミの対応は、個別の状況により異なります。法的措置を検討する場合は、必ず弁護士にご相談ください。
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