盗撮・プライバシー侵害口コミへの緊急対応|写真削除と肖像権侵害の法的措置
この記事は誰のため?
この記事は、Googleマップや口コミサイトで「店内を無断撮影された」「スタッフの顔写真を勝手に投稿された」「個人情報を晒された」という被害を受けた店舗経営者・スタッフに向けて書かれています。
無断撮影・プライバシー侵害は、肖像権侵害・プライバシー権侵害として、民事訴訟の対象になります。また、悪質な場合は迷惑防止条例違反で刑事罰の可能性もあります。
この記事を読むことで、無断撮影された写真の削除申請方法、肖像権侵害の法的判断基準、損害賠償請求の流れが分かります。
プライバシー侵害・肖像権侵害とは?

肖像権とは?
肖像権とは、自分の顔や姿を無断で撮影・公開されない権利です。法律上の根拠は、憲法13条(幸福追求権)から派生しており、判例で確立された権利です。明文規定はありませんが、裁判所が一貫して認めてきた権利です。
肖像権侵害の判断基準は、最高裁平成17年11月10日判決で示されました。判断要素は、撮影・公開の必要性、撮影方法・公開方法の相当性、被撮影者の社会的地位、撮影・公開による不利益の程度です。
肖像権侵害になる例としては、スタッフの顔写真を無断でGoogleマップに投稿すること、他の客の顔が写った店内写真を無断で投稿すること、店の外観に偶然写った通行人の顔を無修正で投稿することが挙げられます。
一方、肖像権侵害にならない例としては、店内の料理だけを撮影(人が写っていない)すること、顔にモザイクをかけて投稿すること、公道から見える店の外観を撮影することです。ただし、店内が写り込む場合は要注意です。
プライバシー権とは?
プライバシー権とは、私生活上の事柄をみだりに公開されない権利です。プライバシー侵害の判断基準は3つあります。第一に、私生活上の事実または私生活上の事実らしく受け取られるおそれのある事柄であること。第二に、一般人の感受性を基準にして当該私人の立場に立った場合、公開を欲しないであろうと認められる事柄であること。第三に、一般の人々に未だ知られていない事柄であることです。
プライバシー侵害になる例としては、スタッフの本名・住所・電話番号を投稿すること、経営者の家族構成・自宅住所を投稿すること、「店長は前科者だ」などの個人的情報を投稿すること(虚偽でも真実でも侵害になる)が挙げられます。
プライバシー侵害口コミの種類
プライバシー侵害口コミは、内容によっていくつかの種類に分類できます。それぞれ削除基準や法的評価が異なるため、正しく理解することが重要です。
1. 無断撮影された写真・動画

具体例としては、スタッフの顔写真を無断で投稿すること、他の客が写った店内写真を投稿すること、店内の様子を動画で撮影し、YouTubeにアップロードすることが挙げられます。
削除基準として、Googleマップでは「プライバシーを侵害するコンテンツ」として削除対象です。食べログでは「個人のプライバシーを侵害する写真」は削除対象となっています。
2. 個人情報の公開
個人情報の公開の具体例としては「店長の名前は〇〇、住所は〇〇」と投稿すること、「スタッフの△△さんは、前職で〇〇していた」と投稿すること、経営者の家族の写真を投稿することが挙げられます。
削除基準として、Googleマップでは「個人情報を含むコンテンツ」として削除対象です。また、個人情報保護法違反の可能性もあります。
3. 盗撮・隠し撮り
盗撮・隠し撮りの具体例としては、トイレ・更衣室を隠し撮りすること、スカート内を盗撮すること、店内の防犯カメラ映像を無断で撮影することが挙げられます。
法的評価として、迷惑防止条例違反(各都道府県の条例により異なる)に該当します。盗撮の場合、刑事罰の対象(6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金等)となります。
4. なりすまし投稿
なりすまし投稿の具体例としては、スタッフの名前を騙って口コミを投稿すること、「〇〇店のスタッフですが、この店はブラック企業です」と投稿することが挙げられます。
法的評価として、名誉毀損罪(刑法230条)、業務妨害罪(刑法233条)に該当する可能性があります。
緊急対応フローチャート
無断撮影・プライバシー侵害を受けた場合、迅速かつ適切に対応することで、被害を最小限に抑えることができます。以下の順序で対応してください。
ステップ1: 証拠保全(最優先)

即座に実施すべきこととして、まずスクリーンショットを撮影します。投稿全文、無断撮影された写真・動画、投稿者のアカウント情報、投稿日時、URLも含めて撮影してください。
次にウェブ魚拓(archive.org等)に保存します。削除申請前に必ず保存してください。削除された後も証拠として残ります。
さらに、被害者(スタッフ・客)への連絡も重要です。無断撮影された本人に連絡し、削除申請への協力を依頼してください。
ステップ2: プラットフォームへの削除申請
Googleマップの場合、まずGoogle マップで該当の写真を表示します。右上の「︙」(三点リーダー)をクリックし、「写真を報告」を選択します。報告理由として「プライバシーの侵害」を選択し、詳細を記載します。「写っている人物の許可を得ていない」等と具体的に説明してください。
削除が認められやすいケースは、人の顔が明確に写っている場合、スタッフ・客の許可を得ていない場合、トイレ・更衣室など通常撮影が禁止されている場所の写真です。
一方、削除が認められにくいケースは、顔がぼやけて判別できない場合、公道から見える店の外観、料理だけの写真(人が写っていない)です。削除までの期間は通常3日から1週間ですが、緊急性が高い場合は早まることもあります。
食べログの場合、食べログの「口コミに関するお問い合わせ」フォームから申請します。該当写真のURL、削除理由を記載し、「個人のプライバシーを侵害する写真」として申請します。削除までの期間は通常1週間から2週間です。
ステップ3: 警察への相談(盗撮の場合)

相談先は、所轄の警察署(生活安全課)またはサイバー犯罪相談窓口(都道府県警察本部)です。
持参すべき証拠は、スクリーンショット、投稿者のアカウント情報、被害状況をまとめたメモです。
警察が動くケースは、トイレ・更衣室の盗撮、スカート内の盗撮、明らかに隠し撮りされた動画です。一方、警察が動かないケースは、単なる無断撮影(店内の様子等)、顔が写っているだけ、「民事不介入」と判断された場合です。
ステップ4: 弁護士への相談
弁護士への相談すべきタイミングは、削除申請が却下された場合、個人情報が大量に晒された場合、損害賠償請求を検討する場合です。
弁護士の選び方として、インターネット法務に詳しい弁護士、肖像権侵害・プライバシー侵害の実績がある弁護士を選びましょう。
相談料の目安は、初回相談が30分5,000円から1万円(無料相談もあり)、削除請求が10万円から30万円、発信者情報開示請求が50万円から100万円、損害賠償請求訴訟が50万円から150万円です。
公開返信テンプレート(プライバシー侵害口コミ用)
無断撮影・プライバシー侵害口コミには、公開返信をしないことが原則です。返信すると、投稿が削除されるリスクがあり、証拠が消えます。ただし、他の閲覧者への説明が必要な場合は、以下のテンプレートを参考にしてください。
テンプレート1: 削除申請中であることを伝える
この度はご来店いただき、ありがとうございました。
投稿いただいた写真につきまして、写っている方のプライバシーに配慮し、削除申請をさせていただいております。
ご理解のほど、よろしくお願いいたします。
[店舗名] 店長
このテンプレートのポイントは、削除申請中であることを明記すること、他の閲覧者に「プライバシーに配慮している店」と印象づけることです。
テンプレート2: 撮影禁止を伝える
この度はご来店いただき、ありがとうございました。
当店では、他のお客様やスタッフのプライバシー保護のため、店内での撮影はご遠慮いただいております。
今後ともご協力のほど、よろしくお願いいたします。
[店舗名] 店長
このテンプレートは、店のルールを明記し、「撮影禁止」を他の客にも周知する効果があります。
テンプレート3: 返信しない(推奨)
返信しない理由は明確です。返信すると、投稿者が写真を削除する可能性があり、証拠が消えてしまいます。削除申請を粛々と行う方が効果的です。
絶対に書いてはいけないNG返信表現
プライバシー侵害口コミへの返信を誤ると、炎上リスクがあります。以下のNG例は絶対に避けてください。
NG例1: 投稿者を脅す
💡 ヒント: 軽度のクレームへの対応は軽度クレーム対応一覧をご覧ください。エスカレーション対応の他のケースはエスカレーション対応一覧で確認できます。盗撮・プライバシー侵害以外の法的対応は名誉毀損対応マニュアル、削除申請はGoogle口コミ削除依頼もご参照ください。

「無断撮影は犯罪です。警察に通報しました」というNG返信は避けるべきです。投稿者が写真を削除し、証拠が消えるリスクがあります。また「店側が脅迫してきた」とSNSで拡散される可能性もあります。正しい対応は、静かに削除申請と警察相談を行うことです。
NG例2: 被害者(スタッフ)の情報を公開返信に書く
「写っているスタッフの〇〇さんは、無断撮影されて困っています」というNG返信は、スタッフの名前を公開することで、さらにプライバシー侵害となります。正しい対応は、特定の個人名は出さないことです。
NG例3: 感情的に非難する
「盗撮は犯罪です。あなたは犯罪者です」というNG返信は、名誉毀損で逆に訴えられる可能性があります。正しい対応は、淡々と削除申請を行うことです。
法的措置の検討
削除申請が却下された場合、法的措置を検討します。プライバシー侵害に対しては、削除仮処分申請、発信者情報開示請求、損害賠償請求訴訟という選択肢があります。
削除仮処分申請
削除仮処分申請の手順は、まず弁護士に依頼し、裁判所に削除仮処分を申請します。裁判所がプラットフォーム(Google等)に削除命令を出します。
費用は20万円から50万円(弁護士費用含む)、期間は1ヶ月から3ヶ月です。削除が認められやすいケースは、明らかな肖像権侵害、個人情報が晒されている場合、盗撮・隠し撮りの場合です。
発信者情報開示請求

発信者情報開示請求は、投稿者を特定し、損害賠償請求をする手続きです。まずプラットフォーム(Google等)に仮処分申請を行い、IPアドレス・タイムスタンプを取得します。次にインターネットプロバイダ(ISP)に本開示請求を行い、投稿者の氏名・住所を特定します。最後に損害賠償請求訴訟を行います。
費用は50万円から100万円(弁護士費用含む)、期間は6ヶ月から1年です。
損害賠償請求訴訟
損害賠償額の目安は、肖像権侵害が10万円から100万円、プライバシー侵害が50万円から300万円、盗撮・隠し撮りが100万円から500万円です。
判例として、スタッフの顔写真を無断投稿した場合は30万円の賠償命令、経営者の自宅住所を晒した場合は100万円の賠償命令、トイレの盗撮動画を投稿した場合は300万円の賠償命令が出ています。
予防策: 無断撮影を防ぐために
無断撮影・プライバシー侵害を未然に防ぐための対策を講じることで、被害を大幅に減らすことができます。
予防策1: 店内に「撮影ルール」を掲示
店内の目立つ場所に撮影ルールを掲示します。掲示例として以下のような文章を使用します。「当店では、他のお客様やスタッフのプライバシー保護のため、以下のルールをお守りください。料理のみの撮影は可能です。他のお客様やスタッフが写らないようご配慮ください。店内の様子を撮影する場合は、スタッフにお声がけください。ご協力のほど、よろしくお願いいたします。」
効果として、無断撮影の抑止力となり、トラブル時に「撮影ルール違反」として削除申請しやすくなります。
予防策2: SNS投稿ガイドラインの作成
ホームページやGoogleマイビジネスに、SNS投稿のガイドラインを明記します。ガイドライン例として「当店では、お客様にSNSで当店の料理や雰囲気をご紹介いただくことを歓迎しております。ただし、以下の点にご注意ください。他のお客様やスタッフの顔が写らないようにしてください。写っている場合は、モザイク処理をお願いします。店内の様子を動画で撮影する場合は、事前にスタッフにご確認ください。ご理解とご協力のほど、よろしくお願いいたします。」
予防策3: スタッフへの教育
無断撮影を発見した場合の対応をスタッフに教育します。教育内容として、「撮影はお控えください」と丁寧に伝えること、強制的にカメラを取り上げない(暴行罪のリスク)こと、悪質な場合は店長に報告すること、盗撮の疑いがある場合は警察に通報することを徹底します。
予防策4: 防犯カメラの設置
店内に防犯カメラを設置し、無断撮影の証拠を残します。注意点として、防犯カメラの設置を店内に掲示すること(プライバシー配慮)、録画データの保管期間を定めること(通常1ヶ月)、不正アクセスを防ぐためのセキュリティ対策を行うことが必要です。
プライバシー侵害の判例・事例
実際に削除申請・訴訟に発展した事例を紹介します。これらの事例から、プライバシー侵害への対応方法と予防策を学ぶことができます。
事例1: スタッフの顔写真を無断投稿(削除成功)
飲食店のスタッフの顔写真を、Googleマップに無断投稿された事例です。店側がGoogleに削除申請を行い、「プライバシー侵害」として削除されました。教訓として、人の顔が写った写真は削除されやすいことが分かります。
事例2: 経営者の自宅住所を晒した(損害賠償100万円)
口コミで「店長の自宅は〇〇町〇〇番地」と投稿された事例です。店側が発信者情報開示請求を行い、投稿者に100万円の賠償命令が出ました。教訓として、個人情報の公開は高額賠償のリスクがあることが分かります。
事例3: トイレ盗撮動画をYouTubeに投稿(逮捕)
飲食店のトイレを隠し撮りし、YouTubeに投稿した事例です。店側が警察に被害届を出し、投稿者が迷惑防止条例違反で逮捕されました。教訓として、盗撮は刑事罰の対象であり、警察は動くことが分かります。
次のステップ
プライバシー侵害口コミ対応をさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もご参照ください。
- 削除依頼が却下された時の対処法|発信者情報開示請求と訴訟の流れ
- 「金払え」「訴える」脅迫・恐喝レビュー緊急対応マニュアル|警察・弁護士連携
- 差別的発言・ヘイトスピーチ口コミへの対応|削除基準と法的措置の判断
免責
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。肖像権・プライバシー権の侵害判断は、個別の状況により異なります。法的措置を検討する場合は、必ず弁護士にご相談ください。
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